温暖な紀伊半島の11月初旬とはとても思えない吹雪に、夜に紀伊半島の最高峰、大峰山脈の八経ヶ岳の下山の途中で出会いました。
当初から下山は夜になる予定でしたので、道を間違えやすい箇所は十分に記憶しながら登りましたので、下山の時に道を見失うことはありませんでした。
また、気温氷点下、風速10数メートルから20メートル以上の中でも、あらかじめ用意した防寒用のシャツのおかげで寒さで体力を失うと言うことはありませんでした。
登り、下りともに遭難するような危険性は、この登山に限って言えばありませんでしたが、一つでも準備を怠ると遭難するのがわたしが今回体験した登山なのだと実感しました。
仮定として、もしこれが無ければ遭難しただろうという模擬遭難の記録です。
写真は日没の時間に山頂に八経ヶ岳の頂にたどり着いたところです。
山岳遭難は装備と準備が明暗を分ける
夜の登山の危険性は認識していましたが、今回登る八経ヶ岳は世界遺産にも登録されている観光の山なので、道ははっきりと着いていて迷う箇所は少ないと推測しました。天候もここまで荒れるとは予想をしていませんでしたが、あらかじめ氷点下でも行動出来る暖かさを持った衣類を準備しておきました。
夜は他の登山者が通りかかり助けてくれることはありませんので、全てを自分の持参している装備で補えるように装備しました。
懐中電灯とヘッドライトを各1つずつと予備の電池を4本。
ハンディGPS。
最悪のビバークに備えてのエマージェンシーシートと多めの食料(往復5時間の登山に2日分の携帯食料を持参しました)。
ようやく登山口にたどり着き、温度計を写真に撮る余裕が出来ました。1000mの峠でもまだ氷点下でした。
登りに目印を記憶する
入山してから山頂まで、分岐が1つとピークが1つ、この2つが顕著な目印になります。
次いで点々と打ち込められた標識。
最後に木の枝に巻かれていたり岩にペンキで塗られているマーキング。
これらの位置と迷いやすい箇所との相関関係を把握しておきます。
実際、登りの際に、一箇所だけ、下山時に「ここは道に迷う」という岩場が有ったのですが、3本の木の枝にマーキングが施されていたことをおぼえていたので、1分ほどかけて記憶を呼び出して道を見つけました。
もし、登りの時にこの岩場に注意を払わずに通っていたら、右に曲がらず岩場づたいに下っていたことでしょう。
十分な休憩と体力の維持
入山は14:15、八経ヶ岳の山頂にたどり着いたのが16:45です。八経ヶ岳の山頂では休まずに歩き、残照があるうちに弥山に戻り、弥山の山小屋の陰の風が避けられる場所で長めの休憩を取りました。
風による体温の低下が防げましたので、体がずいぶんと暖かくなり、体力も回復しました。
このあと、2回ほど休憩を取る予定でいたのですが、疲れを感じなかったので一気に下山しました。
わたし自身が自分のおおよその体力を知っていますので、入山から山頂まで一気に登れることは分かっていました。
下山時に、まだ残照があったので、弥山で休憩を取らずに残照で歩ける間歩いてから休憩をとることも選択肢としてはありましたが、あえて弥山で十分な休憩を取りました。
ここで十分な休憩を明るいうちに取ったことで、体力だけでなく精神力も回復しました。
休憩も食事も取れるところで早めに取っておくという事が分かりました。
明るいヘッドライトと予備ライト
ヘッドライトは単三電池1本でつく高輝度LEDタイプのものです。
これ一つで足下も10m以上先も見ることが出来ます。電池の持ちが2時間と短いのが欠点ですが、予備電池を十分に用意しているので電池切れの心配は有りません。
また、このヘッドライトが壊れた場合に使えるように、予備の高輝度LED懐中電灯を1つ持参しています。
電気機器は必ず故障を伴いますので、予備のライトを持っていることは精神的な安心感をもたらしてくれます。
この日も途中で電池が切れて交換をしましたが、予備の電池やバッテリーを持参していなかったと仮定すると、ぞっとしてきます。
霧と暴風雪で視界を奪われる
夜、暴風雪に厚い霧が加わりほとんど視界が効かない状態となってしまいました。ライトで照らせる距離は5m前後。ほとんど踏み跡を見て歩く状態で、先を見通すことが不可能となりました。
10m四方の小さな平にでるともう踏み跡が見あたらなくなり、といってライトで平を照らしてみても霧が遮って真っ白です。
この登山道は登りの時に確認していますが、稜線から外れることのない道です。
この記憶を頼りに稜線が伸びている方角を探して歩くと数歩で踏み跡が見つかりました。
ハンディGPSも、歩いてきた道をトラックデータとして表示してくれるので、自分の今歩いている道が往路と比べて外れていないか、役に立ちました。
慎重に1歩1歩歩いて踏み跡を確認したおかげで道に迷いませんでしたが、踏み跡を見失った時に立ち止まらずに感で歩いていれば道に迷ったに相違有りません。
山頂の風の音
八経ヶ岳の頂で聞いた防風の音です。
夜の登山道の音
風の激しい稜線からようやく離れ、下りの道に入った時の風の音です。
感想
夜の登山がいかに危険なものかを実体験しました。
今回は計画的な夜の登山でしたが、こうした事は今回を最後に止めます。直接的な危険性は有りませんでしたが、仮定を考えると遭難と紙一重であったことが分かりました。
また、昨年の両神山登山の時のように、当初の予定よりも大幅に歩く時間が増えたために夜歩きとなるようなケースもあります。両神山の時もビバーク出来る装備は用意していましたが、今回の悪天候を体験した後ですので、より防寒防水対策を施したビバークの装備にしたいとおもいます。