レビュー
ナチュラムのモニターキャンペーンで頂いたテントです。
組み立てて思ったのは、これほど細部にこだわったテントを「貰って悪いかな」ということ。それほど、良くできているテントです。組み立てた時には、当然ながら説明書などは一切読みません。テントの構造が理解できていると、組み立てに説明書はいりません。これほど組み立てが簡単なテントも珍しいのではと思います。
設営に関しては、ムーンライト2やトレックライズ0よりも上の様な気がしました。
ただし、実際に使うとなると、幾つかの気になる点があります。これは組み立てを簡単にするためと軽量化のために実施されたことなので、長所の裏返しとなります。
一つはベルクロを使用していること。ベルクロは水に濡れると粘着性が無くなるからです。もう一点は樹脂パーツが多用されていること。樹脂パーツは折れやすく、折れると補修がきかないので交換しなければなりません。
第一印象
手元に届いた箱を開けて最初に「大きい」と感じました。
実際にオートバイ用の防水バッグに入れようとしたところ、入りませんでした。もちろん、登山用のザックにも入りません。どの様な手段でキャンプ地まで持ってゆこうかと考え込んでしまいました。
テントの設営
ポール
いつも、新しいテントを手に入れると、実際の仕様の前に近くの公園で張ってみるのですが、今回もそうしました。
シリウス2の設営は驚くほど簡単でした。
写真を撮りながら設営をしたのですが、わずかに15分で完成してしまいました。集中してテントを張ったら5分かからないかも知れません。
これが袋に入った状態のシリウス2です。
袋が紐で縛られているのが、シエラデザインらしいです。紐はすぐに無くしてしまうので、個人的に何か対策を施しておこうと思いました。
袋から出して見ました。
テント、フライが巻かれていて、中にペグとポールが入っています。
これがペグと固定ロープ。
ペグはわたしがあまり好きではないL字型ですが、一番廉価なので致し方ないでしょう。素材は軽金属でとても軽量なのは評価できます。
ポール。
輪ゴムでくくってあったのには笑ってしまいました。
直径がとても細いポールでやや不安に感じましたが、細い割にずっしりと重さを感じます。
テント本体を地面に敷き、ポールをその上に置きます。
ポール2本は留め具で固定されて居て、分離しないようになっています。
これが2本のポールを固定する留め具。
樹脂製なので、耐久性が心配です。
ポールとテントの接続の仕組みはよく考えられていて、とても簡単にできます。
テントの四隅に留め具がついていて、そこにポールの先端の球状の部分を差し込むだけです。
テントの中心にあるフックを、2本のポールを固定している留め具に着けます。樹脂製。
このつり下げようのフックの形状はよく考えられています。
付け根から先端にかけて緩やかに曲がっていて、この曲がりに沿ってポールにフックを絡ませると力を入れずにフックをポールに差し込めます。樹脂製。
テントの中心とポールの中心が微妙にずれているのが気になります。
長期間に使った時に過負荷がかからないか心配になってきます。
フライ
フライをかぶせます。
フライの形状は左右対称ですが、ドーム型には珍しく前後は非対称です。
それなので、かぶせた時に前後を間違えないようにしなければなりません。すこし面倒です。
テント、フライをポールに固定するのに、ベルクロを使用します。
ここを深めの生地で覆うことで、雨が風で巻き込まれてファスナーから室内に染み込んでくるのを防いでいます。この辺りはよく考えられています。
フライの前室を固定するためにペグを打ちます。
軽合金でとても軽いのですが、残念ながらL字型のペグです。
この紐の長さを調整する機能もよく考えられています。
引き出す紐の角度を変えるだけで、固定させたり伸ばしたり縮めたり出来ます。
テントとしての居住性
これが完成したシリウス2です。
フライが半月のように欠けているのは、出入りやすさと、通気性の確保のためです。
横から見たところ。
左右に同じ形の前室が設けられていることが分かります。
左側の方の固定の紐を長く取ってあるので、前室もやや大きめになっています。
これは、良く出入りをする側の入り口の前室の面積を大きく取ることで、出入りしやすくするためです。
これは反対側の出入り口。
色が青色なので、違いが分かります。
色を変えてあるのは、相当に細かい気遣いです。ここまで気がつくメーカーは他に無いのではと思います。
入口のファスナー部分。
入口にはフライが部分的にしかかかりませんので、防水のための工夫が施されています。
手でめくりあげているのが、ファスナー部分を覆う生地です。この生地があるおかげで、ファスナー部分からの浸水を防いでいます。
大胆にフライを切り欠きながら防水の性能を維持するための工夫です。
テントの入口を開けたところ。
入口は下側が固定されて居ます。
あけた時に邪魔にならないように、ベルトで固定できるようになっています。
これは、しっかりと作り込まれたテントなら定番の機能です。
室内に銀マットを敷いて、大きさの比較をしてみました。
さすがに2人用なので広々としています。
これだけの広さがあれば、一ヶ月を越えるロングツーリングでも狭いと感じることは無いでしょう。
テントの屋根を見上げたところ。
テントのドームの中心の一番高いところに座ると、身長173cmのわたしが座っても、頭上にまだ余裕があります。
狭苦しさはみじんも感じませんでした。
テントの生地はメッシュ。
これが話にきいていた、夏専用のメッシュテントでした。
だから、通気性にこだわっていたのです。
テントの中から、メッシュを通して外が見えます。
この辺は個人の好みの分かれるところ。
涼しさは欲しいが、外から見えてしまうというのはちょっとという人もいるはずです。
室内のポケット。
左右に1つずつあります。ポケットは中程で仕切られていて、2つのポケットとして使えます。
一方にオートバイや自転車の鍵などを入れてなくさない習慣を身につけ、もう一方にはLEDライトやヘッドライトなどを入れるという使い方をするのに重宝します。
入口を前後共に開け放したところです。
反対側の地面がよく見えます。
入口のファスナー。
当たり前ですが両開きです。両開きでないととても使いにくくなります。
右が白色の入口、左が青色の入口です。
室内から見ると、左右で色が違うので、ちょっと妙な気がします。
前室。
靴を置くのには十分なスペースですが、雨天の時の調理は無理なようです。
ソロで使用する時には、広い室内に荷物を全て入れられるので,前室を使用することはほとんど無いでしょう。
感想
設営の簡便性
テントを設営することに関して、細部にまで配慮を行き届かせているテントです。どうすれば組み立てやすいかを考え抜いた上に、これまでの製品からのフィードバックも反映しているのだと思います。
本文でも触れましたが、これほど組み立てやすいテントも希と思います。
テントの設営が面倒だと、せっかくのキャンプも楽しさが半減してしまいます。
特に、長期間の旅をしていると、テント設営が面倒に感じると、夕方になると憂鬱になるものです。
シリウス2なら、そうしたことはありません。
わたしは、テントはムーンライト2やトレックライズ0と言った設営の簡単なテントを主に使用してきたので気がつきませんでしたが、テントを選ぶ際には、一番に重要な事は設営の簡単なことではないかと思うようになりました。
1万円台で購入できるテントのほとんどは設営に手間がかかるものですが、これほど設営の簡単なテントは珍しいでしょう。
耐久性についての疑問
実際に使うとなると、まず耐久性が心配です。
考え抜かれている設計なので杞憂なのかも知れませんが、樹脂製パーツが多く、折れた時には金属パーツと違って現場での補修はまず出来ないので、テントが張れないという事態も予想されます。
また、重要な箇所ではありませんが、ベルクロを使用しているのも気に入らないところ。
テントのように雨天時にもっともありがたみを感じる道具で、水に弱いベルクロを使用するのはどうかと思います。
メッシュテントと言うこと
メッシュテントと言うのは、わたしは初めてなのですが、中から外が透けて見えるというのは慣れないからか、違和感があります。
当日は若干の風がある晴天でしたが、風通しは適度にあり、日差しの下にテントの中で小一時間ほどいましたが、暑さは感じませんでした。大抵のテントが暑さを感じる夜でも、このテントなら快適に過ごせそうです。
快適な居住性
広く高い室内は、ソロで使用するのには十分すぎるほどです。
メッシュテントなので、熱帯夜など暑さに対しては部類の強さを発揮します。
反面、気温が低い標高の高いところで使う登山には不向きです。保温性は皆無なので不向きと言うよりも使えないと考えた方が無難です。
北海道や北東北地方のような、夏でも平野で気温が10℃前後にまで下がるところで使うのもためらわれます。10℃まで下がってもろうそく一本をともすだけで、室温は驚くほど高くなるのですが、シリウス2はそうしたことも期待できません。
このテントで暖かさを得ようとすると、着るものかシュラフと言うことになります。
雨天時使用の疑問
シリウス2に限らず、フライ付きのテントの本体は、ほぼ全て床以外は防水されていないのですが、それでもメッシュと言うことで構えてしまいます。実際には、防水性は心配ないのですが。
大きくフライが切りかけている点が、やはり雨天時に使用して大丈夫かと、心配になります。
上から雨が落ちてくる無風の雨天なら問題はないと思いますが、風があり、前室に風が吹き込む天候だと雨が入ってきそうです。
たとえ雨がテント内に吹き込まなくても、メッシュと言うことで保温性はゼロですから、雨天時の気温の低下に対しては、テントは無力です。
雨が降りそうな日には、ホテルやとほ宿やYHに避難するべきなのかも知れません。
耐風性
当日は若干の風がありましたが、風に対しては、向きによっては驚くほど無力です。
前室の約半分が切りかけているのですが、この切り欠けが風上を向いている場合、風が前室をあおってしまいます。
風速数メートルの風でも、おそらく一晩は持たないと思います。
風から前室を支えるには、あまりに付属ペグが貧弱すぎます。ペグを深く強く打ち込めるタイプに変更すればある程度の耐風性は得られるでしょう。
風向きに対して、前室が閉じている側を向けるように設置をすれば、風はフライの外側を通るので、ある程度の耐風性は得られると思います。
携帯性
折りたたんで格納したときの大きさが52cmもあるので、携帯性に疑問があります。
オートバイや自転車の荷台やバッグには収まりそうにありません。
もちろん、背中に背負ってゆく登山用のザックにも入りません。
なんで、こんなに大きくしたのかと開発者に聞いて見たくなります。2.2kgと2人用のテントとしては軽量な部類に入るので、なおさら大きさが恨めしいです。
わたしがテントを使うのは、オートバイツーリング、サイクリング、登山、カヤック・リバーツーリングの4つなので、何とかこの大きなテントを持ち運ぶ工夫を見つけたいものです。
スペック(仕様)
サイズ:約135cm×213cm×高さ99cm
収納サイズ:58cm×15cm
総重量:2.2kg
出入口:2
フロア面積:2.9平方メートル
前室面積:0.4+0.4平方メートル
フロア素材:75Dポリエステル、3000mm
本体素材:68Dポリエステル、Dye-Free White
フライ素材:1500mm
ポール素材:DAC PressFit
輸入販売元:プリ三ティ・インターナショナル株式会社
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