2011/5/6、幸い雨には降られなかったものの、一日寒い風が吹き、最高気温はやっと二桁の10℃です。
前回に歩いた穴路峠が魅力的だったので、この日は鳥沢駅から穴路峠まで登り、高畑山を経由して稜線道を赤鞍ヶ岳まで南下、ここから道を西向きに変え、菜畑山、今倉山と経由して富士急の赤坂駅に降りました。
中央線や桂川が流れる人の行き来の多かった甲州街道から南に山を貫くように南下するルートを取ったので、高低差が激しく、地図上の直線距離に比べると体力を消耗する登山でした。
山頂付近はまだ冬の景色を残していて、稜線も藪や草に覆われる前の季節だったので歩くのに不自由はありませんでしたが、夏になると笹や草が道を覆い隠してしまうのではと思われます。
所要時間
- 05:50 鳥沢駅出発
- 07:52 穴路峠
- 08:23 高畑山
- 09:33 雛鶴峠
- 10:58 棚の入山
- 11:47 赤鞍ヶ岳
- 14:00 菜畑山
- 14:00-14:29 昼食
- 16:09 今倉山
- 17:36 二十六夜山
- 19:13 上戸沢入口バス停
- 20:09 富士急赤坂駅
- 累積の標高 3034m
総時間13時間50分
標高
鳥沢
鳥沢駅から穴路峠を目指します。
鳥沢駅を降りて甲州街道を歩いていると、道沿いの民家の作りが独特なことに気がつきました。
最初は街道の通行者を当てにした商店の名残かと思ったのですが、間取ものを陳列したり販売したりするのには向いていなさそうで、この地域独特の民家の造りではないかと思えます。
街道沿いの民家すべてというわけではないですが、半分前後は間口の広い二階建ての家です。建坪がとても大きく立派で、屋根の作りなどを見ているとかなりの年月の風雪を過ごしているように見えます。
民家を見ながら歩いていたら、歩道を踏み外して車道に転倒してしまいました。
国道でもこのあたりは昔からの街並みなので、道幅が広くとれなかったようです。このため歩道は申し訳程度の幅しかなく、下を向いて歩いていないと踏み外してしまいます。
幸い早朝だったので車通りがなかったので無事でしたが、1台でも通っていたらどうなっていたことやら。
桂川もこのあたりは渓谷をなしていて、深く落ち込んでいます。
橋は少し下って渡ります。
穴路峠の入り口までは、「高畑山」か「倉岳山」の案内板が立っていたので迷うことはありませんでしたが、住宅地の狭い道を右に左に曲がるので、なかなかわかりづらい道順です。標識がなければとてもたどり着けないでしょう。
住宅地の外れに一般の車止めのためのゲートがあり、ゲート脇に登山者用の通用口がもうけられています。
ゲートをくぐると小さなダムでで、怖いくらいの青色の水をたたえていました。
地図には小篠貯水池と書かれています。堰の上には東屋がありました。近所の人の散歩道なのかもしれません。
鳥沢駅からダムの登り口までは住宅地の中を歩きます。早朝の散歩をしている人が幾人かいて、皆さんが「おはよう」と挨拶をしてくれます。
甲州街道沿いに並ぶ独特の作りの民家。 |
住宅地の道の分岐には必ず山の名前の入った標識が立っています。 |
鳥沢の住宅地から山を見上げます。 |
鴨の群れが頭上を横切ってゆきました。 |
渓谷の装いの桂川。 |
住宅地の奥にある林道のゲート。登山者は右側の扉を開けて通ります。 |
林道を歩いて行くと小篠貯水池の堰の下に出ます。 |
小篠貯水池。 |
穴路峠と高畑山
ダムを過ぎると車が通れる道は終わります。
しばらく渓流沿いの道を歩くのですが、これがかつての車用の林道のなれの果てで、道の土砂が雨水で流されてしまい、岩が露出していてとても歩きにくくなっています。
道もこうなると岩場より始末が悪くなります。
荒れた道が終わる頃に高畑山の山頂へ直接登れる道との分岐があり、分岐を過ぎるとお地蔵様を彫り込んだ標石が道の上に置かれていました。
この標石は、年月が刻まれていたのですが、よほど古いのか摩耗して判読できなくなっていました。穴路峠をまだ旅人が往来していた頃の名残かもしれません。
標石を過ぎると涸れた沢を巻くように歩き、やがた稜線の斜面のトラバースルートを歩きます。人がすれ違うのはまず無理な幅の道でした。
かつての穴路峠はこの沢を登り詰めて歩いたのだろうと思うと、なかなかハードな道であったことが忍ばれます。
それまで薄暗かったのですが、標高が上がるにつれて日が差し込んで明るくなります。標高の高いところはまだ葉が伸びきっていないので日を遮らないのです。
視界も多少あり、歩いている尾根と平行して高畑山の山頂へ伸びている尾根が見られます。
穴路峠から高畑山に登り、雛鶴峠へと向かいます。
林道の土砂が流失して石だけが残って歩きづらい道となっていました。 |
林道の残骸を離れて歩道に入ります。 |
しばらくは渓流の流れを巻いて登ります。 |
滝の瀬肩の岩の上に栃ノ木の大木がありました。 |
渓流を横切ります。 |
尾根の斜面を斜めに登ります。 |
人一人がやっと通れるトラバースの道。 |
穴路峠。 |
穴路峠から高畑山への登り。 |
高畑山の頂。 |
雛鶴峠
かわいらしいなまえが気に入った雛鶴峠ですが、そこへ行くまでの道がなかなかの険路でした。
まず、高畑山からきつい斜面を下ります。
最初は山肌を下っているのかと思ったのですが、わずかな尾根の上を歩いていました。
ぐんぐん下ると狭い幅のコルで、国土地理院の地図には点線が描かれていて登山道の表示がありましたが、左右の斜面を見てみると、とても人が登ってこられるような傾斜ではありません。
コルの標高は814mで、981mの高畑山から160m以上も下ってきたことになります。
コルからまた同様の斜度のきつい登りとなります。尾根の上に登り切りしばらく歩くと大タビ山の頂です。
この先に地図では高岩という名前の分岐があります。
峠のある箇所に標識はなく分岐だけがあるので、どちらに行けばよいか地図と見比べていると、このあたりを地元としている登山者が書いたのか、手製でサイマル山と書かれたビニールテープが樹木に巻かれていました。
このルートの頂には、手で書いた山頂を示すテープが多くあります。こうした目印がないと、道に迷いかねません。
雛鶴峠へ下る道は檜の林の中を通ります。
これまで歩いてきた道には杉の林があり、杉の木は枝が切り落とされていたのですが、檜の枝は生えるに任せているようです。
道には落ち葉がつもっていてふかふかです。落ち葉がクッションとなって足腰への負担が少ないので快適ですが、油断をしていると道を見失いかねません。
雛鶴峠は切り通しの峠でした。標高は799m。
誰が書いたのか、「この先道なし」を読めました。
下をトンネルが通っているので、むかしの峠は通れなくなっているのかもしれません。
高畑山から雛鶴峠へ急さかを下ります。 |
狭い稜線の鞍部。 |
鞍部を過ぎるとすぐに登り。 |
大ダビ山の頂。山頂と言うよりも稜線上の一突起です。 |
檜の林。 |
高岩の分岐で見つけた手製の案内標。 |
雛鶴峠へ下る途中の岩場。 |
ぐんぐん標高を落としてゆきます。 |
雛鶴峠。 |
雛鶴峠の標識。 |
赤鞍ヶ岳
雛鶴峠から坂を登ると、途中は樹木が伐採されていて視界が開けます。
しかし雲が低く、標高1200mの周りの山も頂はみな雲の中に隠れてしまっています。
歩きにくいというわけではないのですが、道は枯れ葉に覆われてしまい、登山道と言うよりも踏み跡と言いたくなるような箇所も多くあります。
ほとんどの区間が稜線の上を歩くので踏み跡程度でも見分けがつくので助かりましたが、岩場が途中にあったりすると道を見失っていたかもしれません。
右下を見ていると、道の駅風の建物と駐車場があるのですが、どうも道の駅ではないようです。
採石の会社かとも思ったのですが、会社にしては綺麗すぎます。
さてこの建物は何なのだろうと不思議に思っていたのですが、稜線がぐるっと建物の上を回っていて、それまで隠れていた西がわが見えてきてやっとわかりました。
リニアモーターカーの実験線です。道の駅に見えたのは、見学者用の駐車場や休憩施設でしょう。
サンショ平(棚の入山)は開けた稜線です。平というなまえの通り、小さいながらも広場風になっています。
ベンチの代わりの丸太が数本置かれていました。
樹木は南がわが着られているので広い視界が楽しめるのですが、見えるのは雲ばかりです。
ここから赤鞍ヶ岳へ向かう道の入り口はとてもわかりづらく、小さな標識がなければ見逃すところでした。
棚の入山から赤鞍ヶ岳にかけての稜線に一カ所崖が崩れています。
歩いて危険というわけではないのですが、里山の感覚で周りの景色を見ながら歩いていたので、危うく転落するところでした。
がけの下をのぞいてみると、50mかそれ以上の深さがあり、落ちたらただではすみそうにありません。
稜線を上り詰めてゆくと赤鞍ヶ岳の山頂です。
頂は三叉路があります。
登り切ったので頂と言うことはわかるのですが、樹木が生えていておまけに平たいので雰囲気はとても山頂とは見えません。
伐採で開けたところ。雲がなければ眺望が楽しめそうでした。 |
リニア実験線の駅? |
狭い稜線の上の道。 |
棚の入山に向かって登り始めます。 |
伐採された赤松。なぜか赤松の木だけが切られていました。 |
棚の入山。別名のサンショ平の通り開けた広場となっています。 |
棚の入山にある、小さな標識。赤鞍ヶ岳と書かれていました。 |
棚の入山から赤鞍ヶ岳へ伸びる稜線の上の道。 |
稜線の道は一部が崩れかけていました。 |
相当に藪の深い道の様ですが、刈り払われていました。 |
赤鞍ヶ岳の頂。樹木に囲まれた広場です。 |
菜畑山
赤鞍ヶ岳から菜畑山までは1100mを下ることのない稜線歩きです。
地図にはブドウ岩ノ頭や岩戸ノ峰などの名前が書かれているのですが、歩いていると名前をつけなければならないほどの顕著なピークはありません。
むしろピークトピークの間の下りきった鞍部に名前をつけたくなるくらい風情があります。
菜畑山が目の前に見え出すと、一度ぐっと標高を下げます。
どうせ登るのなら下る標高は少ない方がありがたいという登山者の思いをあざ笑うかのように下ってゆきます。
そろそろ勘弁して欲しいと願う頃に道は登りとなります。
菜畑山の山頂の下の登りは比較的楽で、一途に登らずに、標高100m弱を登ると踊り場があるので歩きながら一息が入れられます。
樹林の中の道を上っていると、前方が明るく見えているのが菜畑山の山頂です。
山頂は二十六夜山から今倉山と続く稜線の東の端にあたります。
南がわには樹木は全くなく視界は広いのですが、雲が邪魔をして遠望は効きません。
ここの頂で昼食としたのですが、樹木がないので風を遮る物がありません。
気温はようやく二桁の10℃。しかし強く冷たい風が絶えず当たるので体感温度は氷点下だったかもしれません。
ここまでTシャツで通していたのですが、さすがに体を動かせない食事中は上着を着ました。
赤鞍ヶ岳から菜畑山へ向かいます。稜線の上は笹が茂っていますが、道は刈り払われています。 |
ヤマツツジ。 |
道は落ち葉に覆われていました。 |
菜畑山の下の登り。 |
菜畑山の頂。 |
菜畑山の頂からは南の視界が開けています。 |
今倉山
標高1470mの今倉山まで地図上では187mの標高差があります。
道は思ったよりは歩きやすく、標高を少し稼いでは平らな区間を歩きます。
富士山のように休みなく一途に上る登山道はすぐにばてるのですが、このように斜度のほとんどない踊り場のようか区間が混じると長い時間を歩けます。
標高が高いのに今倉山の頂は樹木に覆われていて眺望はありませんでした。
この頂も三叉路があります。
道志山地の顕著な山は、不思議と三叉路や十字路となっています。鞍部に峠があり十字路となるのはわかるのですが、なぜでしょう。
今倉山へ至る稜線の道。 |
今倉山の下の登り。 |
今倉山の頂。 |
赤岩の岩場の登り。 |
二十六余山
今倉山がこの日の一番高いピークです。
到着したのが午後4時過ぎで、午前6時前から歩き出していたので10時間を経過していました。
さすがに足にけだるさを感じます。
初めて歩く地域だったので山の様子がわからず、いくつかのプランを用意していたのですが、その中には今倉山から御正体山まで足を伸ばそうというものもありました。歩いてみてさすがにこれは無理だとわかりました。地図上の距離では歩けそうなのですが、やはり1200mを越えるピークをいくつも超えてゆくと、累積の標高が大きくなります。
今倉山から二十六夜山までの稜線は、下り一本調子の道だと思っていたのですが、途中に1400mを越えるピークが3つ4つあり、上り下りが疲れた体にこたえました。
それでも、岩だらけの頂の松山いうピークは、山頂に樹木がなく360度のパノラマを楽しめました。
このときは雲高が少し高くなったのか、周囲の山の頂もはっきりと見ることが出来ました。
赤岩を過ぎ、次のピークも過ぎるといよいよ下り道です。
二十六夜山の手前に、地図に載っていない林道(菅野盛里線)があり、稜線が大きく切り取られていました。
二十六夜山(1297m)は、林道からは見上げるような高さがあり、あの山にこれから登るのかと思うとがっくりとしましたが、他に道もないのでやむなく足を進めます。
幸いに坂はそれほど急ではなかったので、気がついたら頂に達していました。
十六夜は知っていますが、二十六夜山とは妙ななまえの山だと思っていたら、山頂になまえの由来が書かれていて、それによると「江戸時代に盛んとなった旧暦の正月と七月の二十六日の夜に、人々が寄り合い飲食などを共にしながら月の出を待つ二十六夜待ちの行事」に由来しています。
旧暦というのは陰暦で、現在の太陽暦におおよそ一月を足した月数となります。正月なら二月、七月なら八月と陰暦ではなります。
旧暦の七月は現在の八月になるので山頂で月見の飲食もうなずけるのですが、旧暦の正月は現在の二月で酷寒の月です。標高1297mの高所で月見の飲食が出来たのか不思議な気がします。
この案内板によると、二十六夜山は日本の花の百名山に選ばれていて、4月下旬から5月上旬にかけてエイザンスミレが見られるそうです。
ちょうど盛りと言うことで、読み終えてから、歩いているときも丹念に地面を見ていたのですが、スミレの群生と言うほどのものは見られませんでした。
どこか山の斜面にかたまって咲いているのか、それもと盗掘で失われてしまったのかもしれません。
赤岩の頂。 |
赤岩からの眺望。 |
まだ冬の景色の稜線。 |
新芽は息吹かけていました。 |
かなりの斜度の坂を登ったり下ったりしながら先へと進みます。 |
標高が高く気温が低いので今が盛りの山桜。 |
尾根の上の下り道。 |
地図にない林道に下ります。 |
林道の峠は登山道が通っていた稜線を切り通したものでした。 |
二十六夜山の頂。 |
二十六夜山から見た御正体山。 |
矢多沢の道
二十六夜山から赤坂駅に下る道が二通りあるのですが、地図で歩く時間が短く書かれている矢多沢ルートを取りました。
これがすごい道で、山頂から途中まで、ジグザグを切らずに斜面をまっすぐに下ってゆきます。1297mの二十六夜山から990mまで一直線に下ります。
稜線からそれて矢多沢に下るジグザグの道も急勾配で、ジグザグを切ってあっても体重がつま先にかかって指先が痛くなりました。
標高が下がるに従い緑が濃くなって行き、稜線上の樹木はようやく新芽が息吹いた程度の緑であったものが、このあたりでは周りにいっぱいに広がっていました。
下りきったところが矢多沢の最上流で、このあたりは雨の時にしか水が流れていないようです。
曇り空で薄暗い上に、夕暮れ、図上にはうっそうとした杉の林が覆い被さっているので、先が見えなくなってしまいました。前回に続いてこの日も乾電池のヘッドライトをともすことになりました。
山道の夜歩きは今シーズンはしない、と思っていたのですが、またやってしまったと思いました。
どうも日があるうちに山を下りてしまうのがもったいないという感覚があるようです。
矢多沢の下り道で足が痛くなっていたのですが、上戸沢の集落に真っ暗になる前につけてほっとしました。
しかし、上戸沢から赤坂駅までが長かった。
疲れていることもあって、歩いている時間がとても長く感じます。
舗装された県道には歩道が断続的に敷かなく、スピードを出している乗用車がかすめるように通ってゆくのでかなり怖い思いをしました。
富士急は、この日気がついたのですが単線でした。時刻表を確認すると、午後8時19分の列車が1本あるだけで、これを乗り過ごすと1時間待たなければなりませんでした。
列車の出発前に赤坂駅に着いたのは幸運でした。
疲れたからと言って後1回休んでいたら乗れないところでした。
尾根の上の下り道。300m以上を一直線に下ります。 |
尾根の斜面をジグザグに下ります。 |
冷たくはありませんでしたが癖のない味の仙人水。 |
矢多沢にかかる橋。ここからは車道となります。 |
上戸沢がわの入山口。ゴルフ場の入り口の舗装路の途中にあります。 |
富士急の赤坂駅。 |